痔は女性より男性に多い?
痔は男性に多いというイメージがありますが、実際は女性の方がなりやすい傾向があります。
では、なぜ男性の方が、痔が多いイメージがあるのか、その理由はやはり、デリケートな部分の悩みであるだけに、例え痔であったとしても、わざわざ自分が痔であることをカミングアウトする女性が少ないということがあるのだと思います。
女性の方が男性よりも便秘しやすい、妊娠・出産という女性特有の出来事があることなどが、女性が痔になりやすい要因です。
但し、痔のうちでも痔瘻に関しては男性の方が多いといわれています。
理由は、男性の方が下痢になりやすく、直腸と肛門の境目にあるくぼみに下痢便が入り込みやすくなり、そのくぼみが化膿して痔瘻になるからだと言われています。
痔の種類と原因について
痔には、主に、切れ痔、イボ痔、痔瘻の3種類があります。
このうち切れ痔、イボ痔は女性に多い痔だといわれています。
というのも、切れ痔、イボ痔の原因が便秘にあるからです。
もともと女性の腸は長めであることから便秘になりやすいのですが、それに加え、便意を催しても我慢するので、女性の方が便秘が多いといわれています。
便秘になると、便が硬くて出にくくなったり、多くの便を1度に出してしまおうとすることから、肛門が開き過ぎ、切れてしまうのが切れ痔の原因となります。
また排便時のいきみ過ぎで、肛門に圧力がかかり過ぎ、肛門内にイボ痔ができてしまうといわれています。
同じように女性の場合は、出産時にもいきむので、出産を機に痔になる人もいるようです。
痔瘻に関しては、先述したように男性に多い痔ということになります。
男性の方が下痢の人が多いというのがその理由ですが、その他にも、痔瘻になる原因には先述の他に、ストレスや疲労によって身体の抵抗力が落ちていると細菌に感染して化膿しやすくなるというのがあります。
また、男性の方が排便時に強くいきむので、肛門内に負担を掛け、直腸と肛門の間のくぼみに傷ができ、痔瘻の原因となります。
痔の原因には、この他にも、
- ストレスや過労などで免疫力が落ちている。
- 排便時の拭き残しなどで、肛門を不潔にしている。
- トイレに長く居て、肛門周辺を冷やして、血液の流れが悪くなる。
- 唐辛子などの辛いモノを好んで食べることで、消化されない香辛料が排便時に肛門の粘膜を刺激する。
- 過度のアルコール摂取によって、下痢を起こしてしまう。
- 喫煙によって、血行不良になり、肛門周りの血液の流れも悪くなる。
など、さまざまな原因が合わさって起こるとされています。
痔を東洋医学から考える
さて、東洋医学では痔の原因はどう考えられているのでしょう。
東洋医学では、痔が生じるのは、湿熱による炎症が大腸に生じた時、瘀血(血の滞り)が肛門に生じた時、脾の気が弱って、中気下陥を起こした時の3つが原因として考えられています。
1、大腸湿熱
辛いモノや脂っこいモノ、味の濃いモノ、甘いモノの食べ過ぎや暴飲暴食によって、大腸に湿熱が生じたり、外からの暑熱が大腸に影響を及ぼし、長期間便秘をしたり便秘や下痢を繰り返すことで、痔疾になることをいいます。
ここでの大腸は勿論東洋医学でいう大腸を指しますが、大腸に関しては基本的に現代医学での大腸と同じと考えていただいて差し支えありません。
大腸湿熱タイプの痔は、主に切れ痔や痔瘻の人に多いと考えられます。
痔と同時に肛門部に熱感を感じるのが特徴です。
便秘や量が少なく濃い色の尿が出ます。
2、瘀血
瘀血とは、東洋医学で血液の流れが悪くなり、血が滞った状態を指します。
瘀血になると、滞った血は汚い血となり、瘀血の部分に痛みが生じます。
血を運ぶ気の力が弱ったり、冷え、大腸に熱がこもることによって、肛門に瘀血が生じ、痔になるのが、このタイプの痔です。
瘀血タイプの痔は、切れ痔、イボ痔、痔瘻のすべての人に見られる証です。
3、中気下陥
中気下陥とは、東洋医学独特の証で、東洋医学でいう脾の気が弱って気虚となり、内臓を支える力がなくなって、内臓が下がる病証をいいます。
中気とは、東洋医学でいう脾の気のこと。
脾の気には、消化器機能の働きだけでなく、内臓を同じ位置に保ち、支える昇挙作用があります。
脾の気が弱ると、その内臓を支える力がなくなり、元の位置から下がります。
所謂胃下垂なんかも、中気下陥の特徴の一つです。
これが肛門に起こるとイボ痔や脱肛となります。
中気下陥になるのは、もともと虚弱体質の人に加え、長患いや出産の後、老化、飲食や睡眠の不摂生、過労、ストレスなどによって、脾の気を著しく消耗した場合と考えられています。
このように東洋医学では、痔の種類というよりも、痔になる原因を探ることで、治療の指針としています。
大腸湿熱なら、主にハリを使って、熱を取る治療になりますし、瘀血なら、瀉血を中心とした血液の流れを促す治療、中気下陥なら、温灸を使って、脾の気を強める治療ということになります。
痔は単なる治療だけでなく、日常生活の不摂生の改善も必要となる病気です。
養生法を考える上で、このような東洋医学の考え方は、痔の改善には大切なのではないでしょうか。